ジャイロ・ツェペリは私に何を残したか
私がジョジョをちゃんと読み始めたのはこの数年のことです。
インターネットのジョジョ愛好家達に影響され5部⇒3部⇒4部⇒また5部⇒6部⇒7部⇒8部の順でKindleで読みました。(1・2部は子供の頃読んだっきりです)
単話のエピソードでアツい話が多いのは5部ですが、全体を通して一番好きなのは7部です。
7部は5部や6部に比べると派手なスタンドバトルがあまり出てきません。なのでシリーズを通しで読むと最初は地味な印象を受けました。
そのうえ初っ端から主人公の元天才ジョッキー、ジョニィ・ジョースターは自身の傲りが招いたトラブルにより銃撃され半身不随になり、馬のレースの話だっつーのに自力で馬に乗る事すらできない...という自業自得とはいえ絶望のドン底からのスタート。
ワクワクするというよりも「この先もめっちゃくちゃツラいことが起こるんだろうな…」と主人公達を待ち受ける数々の困難を思うと暗澹たる気分になったものです。
実際にとても長くしんどい旅でした。
でもね、果てしなく続くと思われた時間も「終わってみればあっという間だったな」と名残り惜しく思うことってあるでしょ?
7部もそんな感じだったんですよ。
それはもう1人の主人公、ジャイロ・ツェペリというキャラクターの魅力により物語に引き込まれ、まるで彼と旅をしているような感覚になっていったからです。
なんとここまでが前置きです。
※このあと物語の結末に言及します。
ジャイロ・ツェペリは行動に理論的な意味のある男
彼の人物像は物語の終盤、最強にして最大の壁として立ちはだかるファニー・ヴァレンタイン大統領が語ってくれます。
それがこのシーン。
”行動に理論的な意味のある男。育ちと修練に起因する揺るぎない自信がある”
一見、冷静沈着で保守的なイメージにも受け取れる評価ですが、私が思うにジャイロはシリーズの中でも1・2位を争うほどに熱く、反骨精神にあふれた男です。そのうえで行動に一貫性がある。
ヴァレンタイン大統領ほどの洞察力と桁外れのスタンド能力をもってすれば手が打てないわけではない。それでも最大の脅威として認識され最高レベルの警戒をされる。
敵から受ける賞賛という意味で、これ以上のものはないと思います。
ジャイロ・ツェペリが求めた納得とはなんだったのか?
彼の超有名な名言の一つに
『納得』は全てに優先するぜッ! でないとオレは「前」へ進めねえッ!
「どこへ」も!「未来」への道も! 探す事は出来ねえッ!!
というセリフがあります。
死刑執行人一族の長男として生まれた彼は、無実にもかかわらず死刑判決を受けてしまった少年を処刑することが法務官としての自分の役割だと「理解」していました。
けれど、彼の人としての心はそれを「納得」することを拒否した。
彼の求める納得とは無実の少年の命が救われること。そのため、判決を覆す唯一の手段として過酷を極めるスティール・ボール・ラン・レースで優勝し、祖国の王の恩赦を得る道を選んだわけです。
そして彼には一族が受け継いできた技術と思想、己の修練によりそれを絶対に実現できるという自信もあった。
それが前述の大統領の言葉の背景としてあるのです。
か...カッコ良すぎか〜〜ッ!!!
納得はパワーの源泉となる
ジャイロほど重い運命は背負っていなくとも、人生において大なり小なり選択をしていかざるを得ないなかで、シンドイ事は色々起こります。
でもせめてその辛さが自分の納得を優先させた選択の結果であったなら、誰のせいでもない自分の責任において、迷わず立ち向かうことができる。
迷いがなければ集中がうまれ、集中は『前』へと進む大きな推進力となる。
これがジャイロ・ツェペリが私に教えてくれた大切な人生哲学です。
おわりに
私の2016年はどちらかというと辛いことが多い我慢の一年でした。
よかれと信じてやったことが裏目に出ることも多かったし心にハードな傷もたくさん作りました。
でも後退したという気は全然しないんだな。
“遠回りこそが俺の最短の道だった”
そう彼の言う通り、私も心が納得する道を爆走してやったで!という清々しい気分で新年を迎えられたことを幸せに思っています。
最後に個人的にジャイロ・ツェペリの大好きなシーンで終わりましょう。
オレの鞍の上にはすでに「勝利の女神」が乗っている 他の女の子なんか乗せたりしてみろ!「女神」が嫉妬するだろう… 勝利に見放されるぜ
その鞍の上にルーシーを乗せ、ヴァレンタイン大統領との一騎討ちの末に全てを悟り運命を受け入れる哀しく穏やかな表情